FX取引によって得た収益は、国内と海外を問わずに日本で税金を納めなければなりませんが、国内と海外では課税される税金の区分が異なります。
同じ金額の収益をあげた場合でも、国内FXと海外FXでは税率と納税額には違いがあり、混乱してしまうトレーダーが多いです。
税区分の違いによって異なる税金の算出方法や、海外FX業者の方が初心者に向いていると言われている理由について解説します。
この記事では、これからFXを始めようと考えている初心者や未経験者の方でも分かりやすいように、海外FXの納税について専門用語を使わずに丁寧に解説します。
海外FXの収入は総合課税に分類される
海外FXによって得た利益に対する税金は、総合課税という課税方式によって税額を算出して納税します。
総合課税制度とは、年間で得た所得の中で総合課税制度の対象となるすべての所得を合計した金額に対して課税される制度です。
総合課税の対象となる可能性のある所得は、以下の8つです。
1.利子所得
2.配当所得
3.不動産所得
4.事業所得
5.給与所得
6.譲渡所得
7.一時所得
8.雑所得
投資を含むお金を動かす活動のほとんどは、これらの8つのうちのどれかの所得として分類されます。
ただし、収入が発生する理由によっては総合課税とは分けて、申告分離課税という納税方式が採用されており、国内FXによる収益は総合課税ではなく申告分離課税として取り扱われます。
そして、同じFXトレードによる収益であるものの、海外FXによる収益には申告分離課税は適用されず、総合課税によって税率が決まり、税額を算出して納税を行うことになります。
海外FXによる収益は、総合課税の税区分のうち「雑所得」に分類されます。
雑所得には、本業以外で行う「セミナーなどの臨時講師の代金」「コラムや書籍の執筆料と印税」や、「公的年金」「仮想通貨の売買差益」など、さまざまな収入が含まれます。
総合課税の税率と計算方法
FXトレードによる収益に対しては、3つの税金の納税義務が発生します。
・住民税
・復興特別所得税
また、東日本大震災による被害への補助のための財源として設けられている「復興特別所得税」は、2037年までの期限付きの税金で、所得税額に対して2.1%を加算します。
総合課税は「累進課税方式」を採用
申告分離課税と比べて総合課税の計算が難しいと言われる理由は、所得の総額の大きさによって適用される税率が変化することにあります。
所得が大きくなればなるほど税率が高くなる仕組みで、これを「累進課税方式」と呼びます。
所得の金額によって累進課税方式で決定される所得税の税率は、以下の表のとおりです。
課税対象となる所得額 | 所得税率 | 税額控除 |
20万円を超え195万円以下 | 5% | なし |
195万円超〜330万円以下 | 10% | 9万7500円 |
330万円超〜695万円以下 | 20% | 42万7500円 |
695万円超〜900万円以下 | 23% | 63万6000円 |
900万円超〜1800万円以下 | 33% | 153万6000円 |
1800万円超〜4000万円以下 | 40% | 279万6000円 |
4000万円超 | 45% | 479万6000円 |
この表で注目するべきポイントは3つです。
・所得ごとに控除がある
・最大税率は45パーセント
まず、所得額の最小金額が「20万円を超え」となっています。つまり総合課税の対象となる収入が20万円以下の場合には、所得税の納税義務がありません。
次に、表の右側に記載されている通り、所得税の算出にあたっては所得ごとに一定の金額を控除することができます。控除された金額には税金が課されませんので、納税する所得税が少なくなります。
最後に、総合課税の対象として4000万円を超える所得があった場合には、最大税率がなんと45パーセントになります。
海外FXによる収益に対する税額の計算例
社員やアルバイトなどの雇用がなく、海外FXのみで1000万円の収益をあげた専業トレーダーの場合には、総合課税所得は1000万円で、税率は33%が適用されます。
・所得税額 176万4000円 = 所得1000万円× 税率33%-税額控除153万6000円
・住民税額 100万円 =所得1000万円×税率10%
・復興特別所得税 3万7044円 = 所得税額176万4000円×税率2.1%
つまり、海外FXでの1000万円の収益による税金の合計は280万1044円です。
給料所得が300万円のサラリーマンが、海外FXで100万円の収益をあげた場合には、総合課税の対象となる所得は400万円で、税率は20%が適用されます。
・所得税額 37万2500円 = 所得400万円× 税率20%-税額控除427,500円
・住民税額 40万円 =所得400万円×税率10%
・復興特別所得税 7823円 = 所得税額37万2500円×税率2.1%
つまり、総合課税の対象となる所得400万円への課税額は合わせて78万323円となります。
国内FXの収入に課される税金との違い
国内FXと海外FXの課税の大きな違いは「税率の変動の有無」です。
国内FX業者でトレードを行った場合の収益にかかる税金は、申告分離課税が採用されているため利益の大きさにかかわらず、一律で20.315%(所得税15%、住民税5%、復興特別所得税15%×2.1%=0.315%)となります。
申告分離課税には税額控除がありませんので計算式は非常にシンプルで分かりやすいです。
申告分離課税である国内FXでの取引では、他の収入について考慮する必要はありませんので、300万円の収益があった場合の税額は以下のようになります。
・所得税額 45万円 = 所得300万円 × 15%
・住民税 15万円 = 所得300万円 × 5%
・復興特別所得税 9450円= 所得税額45万円 × 2.1%
つまり、国内FXの収益300万円にかかる税金の合計は60万9450円です。
総合課税と申告分離課税の違いによって、FXからの収益であることは同じであっても、収益の大きさによって国内と海外では税率が異なるという現象が起きています。
収益の大きさごとの納税額の違いは、以下の通りです。
FXによる収益 | 海外FX業者(総合課税) | 国内FX業者(申告分離課税) |
15万円 | ー | 3047円 |
50万円 | 7万5525円 | 10万1575円 |
100万円 | 15万1050円 | 20万3150円 |
200万円 | 30万6700円 | 40万6300円 |
300万円 | 50万8800円 | 60万9450円 |
330万円 | 57万6360円 | 67万395円 |
400万円 | 78万9300円 | 81万2600円 |
500万円 | 109万3500円 | 101万5750円 |
1000万円 | 283万3300円 | 203万1500円 |
3000万円 | 1245万6000円 | 609万4500円 |
5000万円 | 2317万6500円 | 1015万7500円 |
総合課税の計算方法が複雑であるため、一見すると国内FX業者の一律20.315%が有利であるように思われがちですが、400万円強までの収益であれば海外FX業者の方が税額は少なくなります。
海外FX業者のほうがレバレッジが高いため、自己資金に対して大きな収益が発生する可能性が高く、累進課税によって高い税率が課せられる可能性があります。
海外FXの「総合課税」のメリット・デメリット
海外FX取引に適用される総合課税制度には、表面的な税額だけではないメリットやデメリットがあります。
総合課税のメリット
・経費の申告が可能である
・売買手数料も経費に算入できる
・豪華ボーナスには課税されない
税制面で初心者向きである
海外FXトレードに適用される総合課税は、400万円程度までの利益では国内FX業者よりも税額が安くなるのが特徴で、初心者にとって最適な税の区分であると言えます。
それぞれの利益の大きさごとに設定されている税額控除によって税負担が軽減されていることが大きなメリットです。
経費の申告が可能
総合課税では、利益を出すためにかかった経費を計上することが可能です。
・インターネット通信費(の一部)
・書籍の購入費
・セミナーの参加費
海外FXトレードで経費として計上が可能である項目としては、FXトレードを行うために必要な電子機器などと、トレードの知識を得るための書籍やセミナーの代金が挙げられます。
パソコンの購入代金については、購入金額の20%程度までであれば経費として認められています。また同じく通信費についても全体の20%程度までが経費算入可能です。
ただし、スマートフォンなどのモバイル機器の購入代金や通信費については、メタトレーダーのアプリを使用している場合であっても、FXトレードの経費としては認められないことがあります。
売買手数料も経費に算入できる
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ボーナスは課税されない
海外FX業者選びで重要なポイントとなる豪華ボーナスは、取引の資金として使えるものの、現金として引き出すことができないものについては課税の対象外です。
ボーナスをどれだけ受け取っても利益とは見なされないため、豪華ボーナスを投資資金と活用していても課税されることはありません。
もちろん、ボーナスを証拠金としてトレードを行って得られた収益については、課税の対象となる利益ですので忘れずに利益として計上してください。
総合課税のデメリット
・所得の上昇と共に税率が上がる
・過去の年度との損益通算ができない
申告分離課税よりも住民税が高い
国内FXに適用される申告分離課税に比べて、海外FXの総合課税の方が、住民税が高くなっています。
所得税だけを比較すると総合課税のほうが税率が低い利益の大きさであっても、住民税の負担が大きく、申告分離課税の方が有利な税制となっている場合があります。
分離課税では住民税が一律5%、総合課税では一律10%です。
所得の上昇とともに税率が上昇
総合課税に対してネガティブな意見が多くなるのは、やはり累進課税方式が採用されており、所得が上がるにつれて所得税の税率までも上昇することです。
収益の大きさに応じて税率が上がるため、税負担の大きさは加速度的に大きくなります。
4000万円を超える利益を出したときに適用される所得税の最大税率は45パーセントで、住民税の10%を足し合わせると、55%もの利益が税金となってしまいます。
損益通算ができない
海外FXでは、国内のFXや株式取引で出た損失分を差し引いたり、前年度の損失を繰り越して損失として計上するという損益通算ができません。
国内のFXと株式であれば、それぞれの損益を足し合わせて最終的な利益を確定することになりますが、税の区分が異なる総合課税の海外FXは、損益通算の対象とならないのです。
ただし、海外FX同士の損益通算は可能ですので、例えばXMで300万円の利益が出ていても、TRADEVIEWで200万の損失を出した場合には、所得税の対象なる利益は100万円のみです。
さらに、国内のFXや株式投資では、過去3年分の損失を繰り越して利益と相殺することが可能ですが、総合課税には損失の繰り越しが認められていません。
海外FX業者の総合課税まとめ
国内FX業者との比較を行いながら、海外FX業者を使ったトレードで得られた利益に対する税金について詳しく解説しました。
利益が大きくなればなるほど税率が高くなり税負担が増えることが総合課税の欠点ですが、実際に申告分離課税と比較してみると、初心者にとっては総合課税の方が有利なことが多いことが分かります。
総合課税のメリットとデメリットを理解した上で、年間を通して得られる収益を調整することが納税額を低く抑えるためのポイントとなります。
まずは安定した利益を出し続けられるようになることを第一として、もしも稼ぎすぎてしまったら正直に納税を行うようにしましょう。
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